
R-plus+は、社員同士のコミュニケーションを目的とした社内報を、一般に公開した記事です。
※本記事はインタビュー当時の内容です。
ソリューションビジネス部
コンサルティングチーム マネージャー
山下 裕世(やました ゆうせい)Yusei Yamashita
2023年10月中途入社
AI社会実装のフロンティアを切り拓いてきた軌跡
AI業界でのキャリアが長いとお聞きしました。これまでの経歴について教えてください。
山下:キャリアのスタートは、リクルートの求人広告会社で営業を経験しました。当時、テクノロジーを使った採用やAIを使ったマッチングなどが出始めていて、AI自体には興味がありました。2017年のことです。
半年ほど在籍した頃、AIベンチャーのお客様から問い合わせがありました。会社訪問しているうちに気に入ってもらえ、営業職として入社に誘われたのです。ベンチャー企業に携わることでさまざまな経験ができる、そして今後AIが伸びていくだろうという確信もあり、1社目を半年で辞めてAIベンチャーに入りました。
そのAIベンチャーはどのような会社だったのですか?
山下:制御系で使うような、非常に小さいチップやCPUで推論ができる組み込みAIを開発している、いわゆるディープテックのスタートアップ企業です。私はその会社ができて約11カ月のタイミングで営業の第一号正社員として入社し、営業に限らず多岐にわたる業務を経験させてもらいました。
その頃から、AI技術は自分が想像していたより早いスピードで進歩し、社会実装されたAI事例も多く出始めました。例えば金融業界ではクレジットカードの不正検知に導入されるなど、目を見張るようなAI活用が広がってきていたのです。
次第に、現場導入までのリードタイムが長いディープテックではなく、より社会実装に近い領域で活動したいと考え、社会実装の事例を多く持つ、大手上場AI企業に入社しました。すでにビジネスの勝ち筋が一定確立しているような会社です。優秀な人も多く、こんなに成功している会社があるんだ!と驚きました。ここで経験を積めたことは自分にとって大きかったです。
「AIはこれから盛り上がる」と予測されていたということでしたが、現状をご覧になっていかがですか?
山下:AI業界に入ってから今まで、常に日進月歩で進化している印象です。例えば自分の仕事の中でも、資料作成前の壁打ち相手などにAIを活用しますが、1年前や半年前と比べても、アウトプットの質が飛躍的に高まっていますよね。当時の想像を超えてどんどん面白くなっている感覚です。
AIの業界で働く魅力を、どのように感じていますか?
山下:AIは人類が生み出した、まだ新しいテクノロジーです。未踏の領域を切り拓こうとしている、その先頭に立って世の中を変えていっている実感があります。「未来にはこういう世界が広がっているのではないか」とイメージしながら実現していくことが、すごく面白いです。
日本の基幹産業である製造業へのチャレンジ
その後、Ristに入社されました。Ristを選ばれた理由を教えてください。
山下:いくつかありますが、1つは日本の基幹産業である製造業に携わりたかったからです。前職は製造の現場とデータを持っていませんでした。また、ビジネスとしての勝ち筋がある程度確立されていたので、0→1が必要とされる場面が相対的に少なく、もっと自分で作り上げてみたいという思いがありました。
製造業にフォーカスしたとき、京セラのフィールドとデータが備わっているRistと出合えたのです。自由にさせてもらえていて、最近は狙い通り、京セラ案件からクライアントへの横展開までの幅広い領域で、ビジネス戦略策定から実行まで携わらせていただいています。
製造業の魅力はどこにあると感じていますか?
山下:一番は、価値に手触り感があることです。最初のAIベンチャーで製造業のお客様と多く関わりましたが、鉄の塊が工程を経て車になっていくように、モノが実際に動き、付加価値が積み上がっていくプロセスを目の前で実感できる。そのリアリティが面白いです。
また、製造業は他の業界と比べてデジタルと現実世界(フィジカル)の距離がかけ離れており、現場で多くの問題が複雑化していると思っています。だからこそ業界を大きく変えていくチャンスであり、チャレンジしていくやりがいがあります。製造業以外にも、Ristで携わっているライフサイエンスや社会インフラ、また建設系なども興味深いです。製造業から横展開できる可能性を日々考えています。

AIコンサルタントの仕事―AIの使い方の発明と価値創出へのコミット
山下さんの現在の業務内容と、AIコンサルタントとしての役割を教えてください。
山下:AIはこれまで世界にはなかった概念で、活用が進んできたとはいえまだ知られていないことも多いと思います。そこで、AIの仕組みやどういうふるまいをするのかといった基本的な知識や知見をクライアントに伝えることも重要ですが、さらに大事なのは、AIの使い方を発明することです。
コンサルタントの重要なミッションは、「AIをこのように使うと、このような効果をもたらします」といったクライアントの未来をデザインすることです。AIは、設計や使い方次第で、我々の生活や事業を飛躍的に豊かにしてくれる可能性をもっています。
「AIを活用したいが、本当に効果が見込めるのか?」と二の足を踏む企業には、喜ばれますね。具体的にはどのような流れですか?
山下:コンサルティングの仕事には二つのフェーズがあります。セールスのフェーズでは、まずクライアントの現状(As Is)をヒアリングしたうえで課題を抽出し、AIを活用した理想の姿(To Be)を描きます。そのAs IsとTo Beの差分を埋めるためのAIシステムや業務をデザインします。その後、ロードマップを引いて、投資に見合う効果検証のプランを立てて提案書にまとめます。
この時、「どのような効果を生むために、いくら投資できるのか」という投資ロジックを、クライアントと一緒に整理することが非常に重要です。双方が「投資するに値する」と判断できるようにします。
案件が始まるとデリバリーフェーズとなり、提案で整理したAs Is/To Beをさらに精緻化し、どのようなAIを作るかといった要件を詰めていきます。AIに何をインプットし、何をアウトプットさせるのか、クライアントの業務フローがどう変わるのか、さらには効果検証の方法などを具体的に詰めていきます。
AIの知識やクライアントの背景など、さまざまな要素が必要になりそうです。大切にされていることは何ですか?
山下:クライアントとの対話がとても重要だと思っています。クライアントは、クライアントだけに見えている専門領域の未来像を持っています。我々はそこにAIの観点で次元を一つ増やし、ブラッシュアップした未来を描きます。そのためには、クライアントが描いている世界をいったんダウンロードする必要があります。丁寧にコミュニケーションを重ねるだけでなく、現場や工場に入って情報や知識をインプットすることや、専門領域の客観的知識をもつメンバーの力を借りることも、プロジェクトを成功させるうえで大切になります。
山下さんの仕事のモチベーションは何ですか?
山下:自由に仮説を作って検証できることが楽しいです。今は、対クライアントだけでなくRistの事業戦略も手掛けさせてもらっていますが、どんどんブラッシュアップしていけるのが楽しいと感じています。
事業戦略を推進する大切なポイントは何ですか?
山下:クライアントへの価値創出にコミットすることです。クライアントの事業効果を出すことを起点にした事業展開がRistの存在価値を最大化すると考えています。例えば製造業のクライアントでいえば、歩留まりを改善することによって損金を縮小できます。生産できる量が増えるため、需要のある製品なら売上額が上がりますね。また、残業時間が減少することによって従業員の労務改善になり、人件費を抑えることができます。
クライアントの経営に繋がるところまで価値を明確化するのですね。AIの活用は経営戦略ですね。
山下:はい、AIを導入することによってクライアントはどのように喜ぶのか?それはどのような価値があるのか?、という視点は重要です。
確定している未来として、今後の日本は人口が減少していきます。日本の製造業はこれまで品質の高さをコアバリューとしていました。しかしこれらは人に依存していたために、人が少なくなると質を担保できなくなります。すると、従来の優位性を保つことができず、国際競争力を失っていく未来が見えている。
このような見通しを自分ごとと捉えて、人に依存して付加価値を作るというバリューチェーンから、AIを活用して改革していくリーディングカンパニーを作りたい。そこに追随していく企業が増えることで、日本の産業は再興していくと思います。

クライアントへの貢献価値を最大化させるRistの強みと課題
山下さんから見たRistの強みを教えてください。
山下:1つはやはり技術力です。Kaggle※レベルのデータサイエンス技術が担保できているので、クライアントには「当社でこの問題を解くことができなければ、世界でできるところは他にないので諦めてください」と自信をもって言い切れています。
もう1つは、クライアントにある解くべき問題を見極める力です。いくら技術力があっても、フォーカスする問題が間違っていると価値につながりません。Ristは京セラというフィールドで実績を作ることで得た知見をベースに、企業に対して設計、提案できることが強みです。
※Kaggle:世界最大級のデータ分析プラットフォーム。企業や団体からコンペティション形式で出題された課題に対し、分析モデルの精度を競います。Ristには、世界一に到達したメンバーをはじめ、トップランクであるGrandmasterの称号を持つエンジニアが国内最多数在籍しています。
山下さんが思う、Ristの好きなところはどこですか?
山下:個人的に好きなところとして人がいいという点です。お互いにリスペクトがあると感じています。また、好奇心を持って仕事をしている人が多く、情報提供をすると、興味をもって反応してくれることが多いです。あとは、おいしいお店を知っている人がたくさんいるのはうれしいですね(笑)
逆に苦労されたことはありますか?
山下:苦労ではないですが、会社が成長途中なので、「もっとこうしたらいいよね」と構築していく余地はまだまだあると思っています。僕個人が、立ち上がったばかりのAIベンチャーからプライム上場のAI企業まで働いてきたので、その経験を活かしながら取り組んでいるところです。
AIを軸に経験を積まれてきた山下さんの強みですね。社内で大事にされていることはありますか?
山下:社内のコミュニケーションは自分ももっと注力しなければいけないと考えています。システム開発プロジェクトの特性として、メンバーが担う役割がエンジニアサイドとビジネスサイドに分かれやすいですが、そのような進め方ではクライアントへの提供価値が最大化できないと考えます。
それぞれに素晴らしいアイデアや知識を持っていても、こちらが相手と同じ背景知識やコンテキストを把握していないと、コミュニケーションの際に受け取る情報量が大きく減損してしまいます。目指すべきなのは、両サイドの脳が直接つながっているかのように自然に情報をやり取りできる状態です。そのためには、両者が積極的にお互いの領域に染み出していかないといけないと思います。
僕自身、エンジニアの力をなるべく落とさず、かつそこにビジネスサイドの価値を掛け合わせられるよう、技術のことも理解することに努めています。
お話を聞いていると、さまざまな場面を経験してこられたように感じました。ターニングポイントはありましたか?
山下:いくつかありますが、僕は大学を、同級生が卒業するのと同じタイミングで辞めています。卒業でなく中退することを選んだために、高校新卒というキャリアのビハインドを負う経験をしました。
どのような決断があったのでしょうか?
山下:もともとはパイロットを目指して、航空大学校への進学者が多い学部を選んで入学しました。横浜国立大学理工学部の建築学科の中でも特に流体力学などを専門とする分野です。さかのぼると高校生の時、進学校だったこともあり「進路は東大か医学部しか生きていく道はない」と植え付けられていた考えに疑問を抱く中、ホームステイ先のアメリカで異文化に触れたことが大きな刺激となり、世界中を操縦できるパイロットになりたいと考えたのです。
ところが大学に在学しながら社会を知るうちに、パイロット以外にも、自分でビジネスを経営するという道を知りました。一念発起し、大学を休学して人材会社を設立しましたが、さまざまな要因で経営は難しく、大学に戻るもこのまま卒業するのか?それとも社会に出るか?という選択肢の中で、大学を辞める決断をしたのです。その時は、大きな遅れをとったように感じて、取り戻したい気持ちがありました。とにかく頑張らないと、と痛烈に思ったのです。

社会と人をエンパワーメントし、さらなる豊かな未来へ
当時の精神が現在の山下さんに通じているように思えますね。
未来に目を向けて、AIの社会実装を牽引されてきた山下さんが想像する、AI活用が進んだ社会とはどのようなものでしょうか。
山下:フィジカル(現実世界)とデジタルが融合して、これらの境界が曖昧になっていくと思います。この傾向はAIが誕生する以前からありました。例えば、スマホが登場してから我々はスマホなしでの生活が考えられなくなっています。脳(フィジカル)がデジタルに接続しつつあるような状態です。この傾向はAIによってさらに進むでしょう。
いろいろな影響が予想されますが、ポジティブな面では、AIによって人間の能力が拡張されます。つまり、脳みその居場所が頭蓋骨の中にしかなかったところを、デジタル世界にまで広げることができ、結果的に演算能力や情報処理能力を高めることができる。一人の人間にできることが増えていくと思います。
製造業の設備保全の現場でいえば、従来は一人でもくもくと手を動かしていたところを、AIエージェントを「相棒」とし、壊れた原因特定やメンテナンスレポートの作成をサポートしてもらうことで、保全担当者の能力が大きく拡張されます。
AIは、人をエンパワーメントしていく立ち位置で、産業活動だけでなく、個人レベルでも人生を豊かにすることができると考えています。
ちなみに山下さんは、人生を豊かにするためにAIをどのように活用されていますか?
山下:たくさんありますが、一つはダイエットコーチになってもらっています。ChatGPTで目標設定とプランをスケジュールに落とし込み、献立まで考えてくれます。「今日はとんかつを食べたい」とわがままを言っても、「しょうがないな、その代わり明日の計画を変えましょう」と柔軟に対応してくれます。ほかには旅行計画や、自分のスノーボードの滑走動画をインプットして、アドバイスをもらったりしています。
今、家を建てる計画があるのですが、天井にスピーカーとマイクを仕込んで、いつでもAIと対話できる空間を実装しようと考えています。まるで映画「アイアンマン」に登場する人工知能システム「J.A.R.V.I.S.」のように、仕事を始める前に関連ニュースを教えてもらったり、さらにそれを深掘りしてもらったりして、生活全体をAIにエンパワーしてもらおうと思っています。
生活の話がありましたが、山下さんの趣味について教えてください。
山下:たくさんありますが、スノーボード、キャンプ、アクアリウム、ダーツ、サッカー…メジャーどころでいうとそんなところです。基本的に、雪がある時はスノーボード、ないときはキャンプですね。
山下さんは全国に出張も多く、いつも忙しく仕事をこなしておられるイメージですが、プライベートとのバランスを考えておられますか?
山下:バランスは考えていないですね。どっちもやりたいだけ、限界までやるというスタンスです。金曜の22時頃に地方出張から帰ってきて、翌朝4時ぐらいから出発して一泊二日でゲレンデに行き、翌月曜にはまた出張に出かけたりしています。
タフですね!
山下:どれも全力でやっていますね。うちには愛犬がいるのですが、背負ってスノーボードするのが最近の楽しみです。1.8㎏の小さな犬で、ゴーグルをかけさせて滑っていると、周囲からよく声をかけられます。また、その姿で今流行っているAIフィギュアを作成したりして楽しんでいます。


仕事も趣味も全力で取り組めるのは理想的ですね。最後に、これから達成したい目標を教えてください。
山下:Ristがまだ企業や社会課題に貢献しうる規模に達していないと考えているので、そこに取り組んでいきたいです。
その先には、日本の基幹産業である製造業を変えていかなければならないと考えています。AI活用による圧倒的なイノベーションをさまざまな企業に波及させることで、製造業全体の価値を向上させることができます。それによってグローバルなプレゼンスも向上すると考えています。
これまで日本の製造業は、ハードウェアの領域で世界に名を刻みましたが、インターネットの時代にはこれらをうまく融合させることができず付加価値を生むことができませんでした。
AIは、これまでのDXの動きよりも、フィジカル(現実社会)とデジタルの距離を劇的に近づける役割を担っています。遠すぎて交わらなかった二つの領域が初めて交わる可能性があることから、日本の製造業にとって大きな変化点になると思っています。
製造業から日本の産業に影響していく姿が見えるようです。AIを活用しながらクライアントとともに切り拓いていく未来に期待しています。
