
開催日:2026年1月22日
場所:川崎重工業株式会社 明石工場
日本の産業基盤を陸・海・空、そして宇宙から深海に至るまで支え続ける、川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)。 同社において全社的なデジタルトランスフォーメーションを牽引し、高度な技術力で内製化を推進しているのが、DX戦略本部 データサイエンス技術部(2026.4よりAI戦略推進部)です。Kaggle Grandmasterをはじめとするトップレベルの技術者を擁し、現場課題の解決からオープンイノベーションによるシナジー創出まで、その活動は多岐にわたります。特に、実世界のデータにAIを融合させる「フィジカルAI」の取り組みは、業界における先進事例として高い注目を集めています。

製造業の知見とAI技術を融合した価値の創出を探る
このたびはDX戦略本部データサイエンス技術部の皆様との技術交流会を開催いたしました。本会は川崎重工様が持つ製造現場と、培われてきた豊富な知識、そしてRistが磨き上げてきたAI技術力と実装力という互いのケイパビリティを突き合わせる対話の場です。弊社からは、代表取締役社長の長野、コンサルティングチーム シニアマネージャー(2026.4よりAXコンサルティング部部長)の山下、そしてRist Kaggle Teamから劉、三舩、山口が参加。山下のファシリテートによって、両社が知見や能力を補完し合いながら、どのようなスキームで共創できるか、その端緒を開くための議論が交わされました。


世界最高峰のコンペティションから学ぶ課題解決の思考法~Kaggle解法紹介~
前半のセッションでは、Rist Kaggle Team 劉により、Kaggle※コンペティションの解法紹介が行われました。弊社チームが6位に入賞した「Drawing with LLMs」は、画像生成と大規模言語モデル(LLM)に関するコンペティションでした。
この競技のテーマは、「与えられたタイトルに対し、正確かつ美しくイラストを描くプログラム(SVG形式)を作ること」です。作成された画像の整合性と審美性はAIが評価します。
※Kaggle:世界最大級のデータ分析プラットフォーム。企業や団体からコンペティション形式で出題された課題に対し、分析モデルの精度を競います。Ristには世界一に到達したメンバーをはじめ、トップランクであるGrandmasterの称号を持つエンジニアが国内最多数在籍しています。
Kaggleコンペティションでは、Kagglerたちが上位入賞のために仮説検証を繰り返し、極限まで精度を高めます。劉は、拡散モデル(Diffusion Model)を用いた技術的アプローチに加え、チーム内でのディスカッションや試行錯誤のプロセスを共有しました。


川崎重工様からは「どのような方針で取り組んでいるのか」「最も時間と労力をかけたポイントは?」など、実務を見据えた質問が続きました。また異なるアプローチが提示されるなど、今まさにチームとしてコンペティションに取り組んでいるような、活発な意見交換の場となりました。
また、今回のコンペティションには特徴がありました。上位で勝利したチームは、採点AIがどのような考え方で評価するのかといった評価指標(メトリック)を分析し、その攻略法(ハック)を見つけていたということです。具体的には、画像内にタイトルの文章やキーワードを埋め込むことによって、高得点を狙うというものでした。
これに対しては、「Kaggleの上位入賞者はハックを前提としているのか?純粋なモデリングで勝負しているのか?」などといった鋭い質問が相次ぎました。「ハックができるということは、逆説的に、正しい評価指標を設計できる能力があるということ」との視点に対しては、一同が納得するシーンもありました。
与えられた枠組みを理解した上でいかにして最大の結果を出すか、という思考プロセスは、ビジネス課題の解決にも通底します。真剣かつ熱心な議論に、川崎重工様の技術力向上への貪欲さだけでなく、課題に向き合う姿勢がうかがえました。




※本コンペティションの解法はこちらに公開しております。
未来を切り拓くアイディエーション
後半は2つのチームに分かれ、両社が持つケイパビリティを活かした共創についてのテーマで、アイデア創出が行われました。
・チーム1:「AI活用を前提とした計画・生産領域における5~10年後の”あるべき姿”は?」
生産現場における未来に向けた課題は「熟練者の暗黙知の継承」です。設計者の意図や判断の背景にある文脈は、図面やメモに残されていることが少なく、次世代に受け継がれる仕組みがないことは企業にとって資産の損失です。
そこで提示されたのが、「作業中にノウハウを抽出する」という発想です。設計や作業中の思考プロセスをAIがリアルタイムでデータ化することにより、従来のアプローチである「過去データをAIで分析する」手法から、未来のデータを作り出すという技術伝承の構想が検討されました。


・チーム2: 「お互いのケイパビリティを補完しつつ、共創を目指せるような進め方は?」
川崎重工様がけん引してきたロボット制御技術、Ristの画像AI技術の融合をテーマに、互いの強みと課題感を挙げながら模索しました。近年、多くの製造現場で外観検査ロボットが導入されはじめています。中でも大型で複雑な形状の対象物を検査する際、ロボットの撮影パス(経路)生成には人の工数がかかります。これをAIによって自動化・最適化する具体的な解決策が提示されました。
さらに、両チームの発表から「人とAIのインターフェース」へと議論が発展しました。現場の熟練工から本音や直感を引き出すために、人の持つ感情や行動特性に寄り添ったアイデアです。単なる技術論を超え、未来のワークスタイルや文化変容にまで踏み込んだ示唆に富むセッションとなりました。


日本の産業を力強く推進していくパートナーとして
業界の一歩先を見据えた議論は、データサイエンス技術部長の喜多様、そして弊社代表取締役社長の長野によって締めくくられました。
今回の交流会は、両社が持つ知見や課題意識をオープンに交わすことによって強みを理解し、新たな発想や気づきを生む良い機会となりました。単なる技術交流にとどまらず、産業の未来を切り拓いていけるパートナーとして、今後も多角的な視点での情報交換と価値創造を模索し続けてまいります。


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