
※本記事はインタビュー当時の内容です。
インテリジェントAI開発部 Kaggleチーム データサイエンティスト
Rist Kaggle Team Kaggle Master
唐 浩哲(トウ・コウテツ)Tang Haozhe
2025年8月中途入社
LLMとKaggleの知見を掛け合わせ、製造業の未来を支えていく
唐さんの現在の業務内容について教えてください。
唐 :主に製造業の領域で、仕様書などのドキュメントに含まれるテキスト・画像・表などの情報を、LLM(※1)を活用してナレッジグラフとして構造化し、その現場固有の「知識」を扱える形にしています。これにより、現場でのAIエージェントによる質問応答の質を高めるだけでなく、業務に必要な知識の抜けや不足も把握しやすくなり、新しい人が現場に入った際に熟練工と同等の仕事ができるような仕組みづくりにつながります。さらに、そうした知識や暗黙知を次世代に継承しやすくしています。
(※1)LLM(Large Language Model / 大規模言語モデル):大量のテキストデータを学習し、人間のように思考し、自然な文章を生成したり理解したりできるAI技術。
どのような時にプロジェクトのやりがいを感じますか?
唐 :製造業領域といった特定のドメインでは、一般的な手法が当てはまらない場面が多いと感じています。業界を理解し、自分で仮説やアイデアを立てて、検証を回しながら実装に落とし込む必要があるのです。デモを作成して、現場の方からフィードバックをもらいながら修正を重ねていくのは大変ですが、良い結果につながったときに一番やりがいを感じます。
実際にデモを触っていただいて、「これで課題が解決できそう」といった手応えを感じられたときは、とても嬉しいです。ユーザーに近いところで価値を生み出せる面白さがありますね。
製造業の現場には、専門用語や現場の方ならではの知見が多く蓄積されているため、そうした情報を正しく理解しながら扱う必要があります。難しい課題には、チームメンバーと一緒に向き合い、議論しながら糸口を見つけています。
精力的に仕事に取り組まれている様子がわかります。仕事のモチベーションになっていることはどんなことですか?
唐 :大きく2点あります。一つは、新しくインプットした知識や学び、そして自分で工夫したことが成果として返ってくるという実感です。新しい知見や手法を取り入れるたびにアウトプットの質が向上していることは楽しいです。これによって価値を生み出し、クライアントの課題解決ができることにはさらに喜びを感じます。
もう一つは、学んだことがチーム内で有機的に循環していることです。自分が得た気づきや改善を共有できる一方で、他メンバーの視点から学べることも多く、一人では成しえないスピードでスキルを高められることは、仕事に挑む大きなモチベーションになっています。

唐さんの成長意欲が伝わってきます。先のKaggleコンペティション(※2)では金メダルを獲得し、Kaggle Masterに昇格されました。おめでとうございます!
唐 :ありがとうございます。金メダルを目指していたので、素直に嬉しかったです。何より、これまで挑戦してきたことの積み重ねが形になったので、手応えを感じました。以前からKaggleには興味のあるテーマに参加していて、自分のバックグラウンドとも親和性の高い「PhysioNet – Digitization of ECG Images」(※3)というコンペで好成績を収めることができました。
(※2)Kaggle:世界最大級のデータ分析プラットフォーム。企業や団体からコンペティション形式で出題された課題に対し、分析モデルの精度を競います。Ristには、世界一に到達したメンバーをはじめ、トップランクであるGrandmasterの称号を持つエンジニアが国内最多数在籍しています。
(※3)PhysioNet – Digitization of ECG Images:「心電図画像のデジタル化」…紙や写真などの心電図画像から時系列データを復元するAIモデルを構築することで、世界中に眠る膨大な過去の診療記録をデジタル化し、心血管疾患の診断精度向上や医療格差の是正に繋げることを目的としています。 https://www.kaggle.com/competitions/physionet-ecg-image-digitization
今後はRist Kaggle Teamのメンバーとしてもご活躍が期待されます。Kaggleに挑戦する意義はどこにあると感じていますか?
唐 :問題解決という意味で、Kaggleと仕事は共通しているため、Kaggleコンペへの挑戦は双方に相乗効果になると考えています。具体的には、コンペには時間制限があるため、「仮説→実験→検証」を高速で回す力が鍛えられます。モデルを試すだけではなく、評価設計や改善の優先順位付けなど、実務にも直結するスキルがコンペを通じて身につきます。
最近はLLMの流行によって、「仮説検証を高速で回す」という前提自体が大きく変わってきたと感じています。世界に急速に浸透した生成AIと呼ばれるLLMの活用は、試行錯誤の回数を飛躍的に高めることができるからです。以前は10個くらいしか試せなかったアイデアを、今は100個単位で実装・検証できるようになりました。その分、今度は「LLMをどう使いこなすか」といった戦略の力が成績に差をもたらす要素になってきています。

特定のドメインに深く入り込み、課題の本質を技術で解決する面白さ
コンペでの学びを仕事にも活かせているのですね。エンジニアとしてのスキルは、どのように高めてこられたのですか?
唐 :大学時代には情報工学でソフトウェア開発を学び、大学院でAIの研究をしてきました。その後、大手通信会社に就職してから一貫してAIエンジニアとして開発に携わっています。大学院で学んだ医療やバイオの領域にも自信があります。
Ristに入社を決めた理由は何でしたか?
唐 :Ristが主催していたイベント「Rist Meetup 2024『Kaggleは業務の役に立つ』」に参加したことがきっかけです。その際、Ristの技術に対する向き合い方やコミュニティの雰囲気に魅力を感じました。「この環境でもっと深く挑戦してみたい」と思うようになりました。
具体的にどのような挑戦をしたいと思われたのでしょうか?
唐 :前職の大手通信会社では、すでにある汎用的なプロダクトに対してAIモデルの開発から運用インフラの実装まで幅広く携わってきました。そこで今度は、この経験から培った自分のスキルを特定の領域に応用し、一から現場の課題解決に携わりたいと考えるようになったのです。Ristは製造業を中心にさまざまな課題解決に注力していたことから、「ここで価値を出すことは面白そうだな」と感じて選考を受けました。
実際に入社してみて、Ristの好きなところはありますか?
唐 :エンジニアが、技術そのものを楽しみながら取り組んでいるところですね。新しい手法や仕組みに対し「まず触ってみよう」「試してみよう」という雰囲気があって、技術の話を前向きにできる人が多いと感じます。分からないことがあっても曖昧にせず、根本的に課題の本質を理解して、調べて納得できる形で解決していこうとする姿勢が好きです。
メンバーとの交流も活発に行っているのですね。
唐 :はい。LLMなど最新技術の情報共有をしたり、その技術を使ってみたりしてスキルを高めあっています。雑談も楽しいですよ。海外出身のメンバーも多いので、それぞれのホームタウンのおいしい料理などの話をよくしますね。

新しい技術への探求心と現場実装力で、提供価値を最大に
仕事をする上で、大切にされていることは何ですか?
唐 :大切にしていることは2点あります。「新しい技術や手法を取り入れ続けること」とそれらをプロジェクトに応用する「設計・実装力を磨くこと」を両立させることです。AIの発展は目覚ましく、特に最近ではLLMやAIエージェント関連の進化がとても速いので、情報を網羅的に追いながら、試して理解を深めるようにしています。
一方で、取り入れた技術は現場で使いこなせなければ意味がないと考えています。精度だけでなく安定したシステムを構築する設計・実装力を積み上げることも重視しています。これは前職で経験した、すでにあるプロダクトを「どう継続的に、ユーザーにとってよりよいものにしていくか」という考え方に基づいています。例えば見た目は新しいAIエージェントの仕組みでも、「どう分けて、どうつないで、安定して動かすか」という視点は、本質的には従来のシステム開発と同じだと考えています。常に、「安定して動かせること、改善し続けられること」を意識しながら、日々の開発に取り組んでいます。
これまでのキャリアの中で、成長のターニングポイントとなった出来事はありますか?
唐 :2つあります。1つは前職の経験です。さきほどの問いにもつながりますが、既存プロダクトの開発・運用に関わる中で、モデルの開発だけではなく、運用設計まで一貫して取り組むという機会がありました。モデルの精度を高めることに注力するだけでなく、運用まで視野に入れて提供することで初めて価値になるという視点は大きな気づきでした。
もう一つはRistに入社してからです。要件が明確でない状態からスタートする仕事は、今まであまり経験してきませんでした。実際のデータやニーズを整理するところから携わり、プロトタイプで認識合わせをしながら仮説検証をまわす過程を通じて価値提供できた経験は大きな自信になりました。「課題設定力」と「検証の回し方」が鍛えられ、一段レベルアップできたと感じています。
最新のAI技術を取り入れ、製造業にさらなる効率化を
仕事やKaggleコンペなどに熱心に取り組まれ、ご自身の成長を楽しんでいるようにも感じます。プライベートはどのように過ごされていますか?
唐 :自然の中で過ごすのが好きです。時間が取れればできる限り外に出るようにしています。友達と一緒に行くこともありますし、一人でバックパック旅行に出ることもあります。去年、一人でアフリカのサファリに行って、野生動物が実際に生活している風景を見られたことはとても貴重な経験でした。また、冬は雪山でスノーボードをして、体を動かしながらリフレッシュしています。あとは、一人の時間にアニメを見るのも好きですね。

AIの今後と、唐さんの展望を教えてください。
唐 :AIはこれからさらに、一般の人の生活に身近な存在になっていくと思います。今はあまりにも変化が速いので、キャッチアップするだけで精いっぱいになりがちですが、新しいAI技術を楽しみながら吸収していきたいです。実際に手を動かしながら自分の血肉に変えて、世の中に価値を提供していきたいです。
手掛けてみたいことはありますか?
唐 :最近よく手掛けている、LLMによるAIエージェント開発で、製造業のさらなる効率化を目指したいです。今後は、VLM(※4)などのマルチモーダル(※5)を使って、製造業の中で特定のタスクを解決することにも取り組んでみたいです。一つひとつの業務で得られた現場の知識を活かしながら、さらに貢献していきたいです。
(※4)VLM(Vision-Language Model / 視覚言語モデル):画像などの「視覚情報」と、テキストなどの「言語情報」の両方を理解し、結びつけて処理することができるAI技術のこと。
(※5)マルチモーダル:テキスト、画像、音声、動画、センサーデータなど、異なる種類のデータ(モダリティ)を統合し、同時に処理するAI技術やその仕組み。複雑さの理解や、高精度な推論・分析・生成を可能にします。
