【R-plus+番外編】Kaggle Grandmaster対談インタビュー(前編)

オープン社内報「R-plus+」では、インタビューを通じてRistで働く社員の紹介をしています。
今回は番外編で、Rist Kaggle Teamでマネージャーを務める小嵜さんと、2024年5月からRist Kaggle Teamに加わった山口さんによる対談インタビューです!
二人のKaggle Grandmasterが語る、Ristでの仕事内容やKaggleの魅力について、前編と後編に分けてたっぷりとお届けします。


前編ではRistに入社した経緯や仕事内容を中心に、後編ではKaggleに焦点を当てて、お二人にたっぷりとお話を伺いました!ぜひ最後までご覧ください。

            

Kaggle Grandmaster 小嵜 耕平
2023年3月入社。2014年に奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程を単位認定退学。保険・金融・広告をはじめとしたさまざまな事業領域でデータ分析や研究開発などの業務を経験。KDD Cup 2015の優勝を皮切りに数々のコンテストで活躍した。著書に『Kaggleに挑む深層学習プログラミングの極意』(講談社/共著)がある。

                             

Kaggle Grandmaster 山口 大器
2024年5月入社。2020年に東京大学大学院にて修士号を取得、専攻は素粒子物理学。大学院卒業後はAI系ベンチャーで深層学習モデルを用いたシミュレータを提供する製品開発や様々な分野のデータ分析業務に従事。2021年にKaggle Grandmasterに昇格。Kaggleでは優勝を2回、準優勝を3回経験(2024年5月現在)。2023年には一年間で合計7枚の金メダルを獲得した。現在は製造業を中心に画像AI技術を用いた研究や製品開発に携わっている。

          

Rist KaggleTeamについて
世界最大級のデータ分析プラットフォームKaggleで上位の称号を持つメンバーが集まるチームとして、2020年に設立しました。現在はKaggle Grandmaster9名、Kaggle Master3名が在籍しています。

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まずはじめに、お二人がRistに入社された理由について教えてください。

小嵜:Ristに入社を決めた理由は、大きく分けて二つあります。
一つは、Ristでは分野や業種を跨いでさまざまな企業の受託開発を行っているので、業務を通じていろんな企業の技術課題やデータに触れられる機会が多いと思ったからです。

前にアプリ開発の企業で勤めていたのですが、その時は特定の事業の限られたデータを扱う案件が中心でした。一つのテーマに注力できることの良さはありましたが、私の場合はもっといろんなデータを見たい!という欲張りな気持ちが出てきたんですよね。
Kaggleを通じて、いろんな企業や団体のデータに触れることの面白さも知っていたので。

なるほど。では、もう一つの理由は何だったんですか?

小嵜:もう一つの理由は、Kaggleに費やす時間と自己研鑽の時間を確保したかったからです。
先ほど話した「いろんな分野の企業の課題やデータに触れたい」という希望を叶えようとすると、Rist以外で働く選択肢も考えられましたが、Ristには業務の一定時間をKaggleへの参加時間に充てられる制度(※1)があると知りました。
Kaggleに熱中する人は、私も含めてプライベートの大半をKaggleに使う人が多いです。なので、業務時間の一部をKaggleに使える制度があれば、プライベートの時間をKaggle以外の自己研鑽にも充てられると考えました。結果的に自分のニーズと総合的にマッチしていたのがRistだったので、入社を決めました。

※1 Rist Kaggle Team制度:Kaggleコンペティションの成績に応じて、業務時間の一定割合をKaggleコンペティションの参加に充当できる制度。

山口さんはいかがですか?

山口:私は、Ristで働くことを通じて、自分のスキルが直接的に会社の利益や成長に繋がり、会社と共に自分自身も成長できる環境だと思ったからです。
入社前からRistのメンバーとは交流があって、Rist Kaggle Team(以下:Kaggleチーム)の蛸井さんや石さんと一緒にコンペに出たこともあります。その際にRistの話を聞いていました。
RistはKaggleで得たスキルを業務にも活かし、ビジネスや価値に変換している企業であることや、環境が整っていることなど、良い評判をいろいろ聞いていたんです。

あとは小嵜さんと同じく、成績に応じてKaggle時間が業務時間内に定義されるという独自制度は魅力的でしたね。それを使ってコンペに参加すれば、ワークライフバランスも改善されると思いました。

    

山口さんが入社される前、お二人には面識があったんですか?

山口:もちろん小嵜さんの存在は知っていました。Kaggleの成績がすごすぎて、都市伝説みたいな存在というか。(笑)でも、直接会う機会はあまりなかったですね。

小嵜:たしか初めてオフラインで会ったのは、2019年にバルセロナで開催されたKaggle Days Championship(※2)かな?

※2 Kaggle Days Championship: 各地で予選を勝ち抜いた世界中のKagglerが一堂に会し、プレゼンテーションやワークショップ、短時間のコンテスト開催などが行われるオフラインイベント。

山口:そうですね。で、その次に小嵜さんにお会いしたのはRistの採用面接の時でした。

面接ではどんな話をされましたか?

小嵜:山口さんの技術力のすごさは知っていましたし、面接ではあまり技術の知識に関する質問はしなかったですね。私としては、面接での会話を通じて「ロジカルな思考ができているか」などを重点的に見るようにしていました。

山口:逆に私は、技術のことをいろいろ聞かれると思って準備していたんですけどね。(笑)

山口さんほどKaggleで大活躍されている人となると、逆に面接対策が難しいのですね。(笑)
お二人は実際に一緒に働くようになってから、お互いにどんな印象を受けていますか?

小嵜:入社前はそういう一面があると知らなかったのですが、山口さんはチーム運営やイベント実施に対してすごく積極的なんです。入社して早々、社内チャットにあるKaggleチームのチャンネルを「雑談の場としても活用しよう!」みたいな提案をしてくれたり、早速Kaggleチームにいい雰囲気を与えてくれて頼もしい存在です。

山口:私はもともと小嵜さんをレジェンド的存在だと思っていましたが、一緒に働くようになってから、改めてすごいと思うことがたくさんあります。
まず、あらゆることを俯瞰して見ていて、周囲の人に対する気遣いや調和がとれる人だと思います。メンバーの働きやすさに配慮しながら、関わる全ての人を尊重して生産的な議論をしてくれます。
小嵜さんはKaggleチームのマネージャーですが、距離が近くて話しやすいですし、仕事に関係のない趣味の話題とかでも、一緒に話しているだけで楽しいです。

    

Ristでは、誰が提案しても違和感なく受け入れてもらえる

では、Ristで働く環境についてもお聞きしたいと思います。
Ristの社風や福利厚生で「ここが良いな」と思う部分はありますか?

山口:普段よくコミュニケーションをとるのはKaggleチームのメンバーですが、すごく風通しがいいです。優秀な人がいっぱいいて、それだけでも素晴らしい環境なんですけど、思ったことを忖度なしで話せる空気感があります。入社して数ヶ月ですが、のびのびと働けています。

小嵜:山口さんが言うように、Ristは全体的に、思ったことを発信しやすい雰囲気があります。
しかも、それにみんなが応えて動いてくれるところが、Ristの良い部分です。
最近、社内のデータ管理をより効率化するために、新しいデータベースの導入を提案したんです。そうしたら、すぐに情報システムや管理部門の担当者が動いてくれて、2〜3ヶ月後には全てのデータ移行と新しいデータベースの運用が始まっていました。

みんなの業務を効率化したいという、小嵜さんの熱意にみんなが応えてくれたんですね。

小嵜:自分が発信したことに対して、みんながスピード感を持って動いてくれたことは嬉しかったです。規模の大きい会社だと、ある程度大きな責務を持った人が判断して会社が動くイメージが強いですが、Ristでは誰が提案しても違和感がなく、それでいて起用性・機動性が高い会社だなと思います。
会社の変化を実感しやすい点も良いですね。

もちろん、会社のルールについてここを変えたらどうか?を他の部署に提案して、うまく実現しないこともあります。ただ、その時は、なぜそれが難しいのかをきちんと説明してくれるので、Ristはいろんなことをちゃんと議論ができる環境だなと思います。

では次に、現在のRistにおける仕事内容について教えてください。

小嵜:Kaggleチームのマネージャー業務をしつつ、エンジニアとしても活動しています。
受託案件の提案書作成からプロジェクトのリードまで、さまざまな業務を担当しています。

山口:私は現在、得意分野である画像認識AIを開発する業務に携わっています。
加えて、今後どんな事業を進めていくべきか、どういった技術領域を強化していくかなど、会社の成長戦略を考える業務にも携われているので、そういったことにも熱意を持って取り組んでいます。

業務とKaggleを両立されているお二人ですが、Kaggleで得た知見を業務に還元している点と、逆に切り分けて捉えている部分について教えてください。

山口:前者の質問については、Kaggleをすることで業務に関わる基礎の部分も身につくと考えています。知り合いのKaggle Grandmasterの言葉を借りるとすれば「Kaggleは筋トレ」なので、単純にエンジニアリング力、実装力、基礎体力等、いろんなことが副次的に向上する面があります。
実際、LightGBMをはじめとする勾配ブースティング、画像分類、LLMのファインチューニング……いろんな技術がありますが、私の場合はどれも仕事で経験する前にKaggleを通じてできるようになりました。

小嵜:基礎体力について深堀りすると、課題を設計する訓練にもなると感じます。コンペ参加者はコンペを通じて課題の背景やデータができるまでの過程を熟考して深く理解することが求められます。必要ない場合もありますが……。たくさんの良い設計や悪い設計に触れることで「もしこのようなデータが使えたら、もしこのような課題であれば、このような解決策もありますよね?こうしたほうが良いですよね?」といった、提案力の強化にも役立っていると実感します。

一方で、後者の「業務とKaggleで切り分けて捉えている点」についても、いろいろありますね。
例えば、クライアントにモデルの評価を説明する時、Kaggleでよく使う評価指標で説明しても、相手にとっては解釈しづらい内容になることがあります。そういう時はあえて解釈できる指標を使うなど、伝え方を工夫する努力をします。

山口:たしかにクライアントに見てもらう資料はわかりやすい説明が必要ですね。
ただし、ものをつくる段階では、わかりやすさと適切な性能評価の両立を考慮して自分が1番いいと思っている評価指標を使います。
Kaggleも業務も関係なく、ものづくりに対しては誠実でありたいし、クライアントがせっかく自分に任せてくれた以上は最大限の結果で返したいという気持ちで取り組んでいます。

    

コミュニケーションのためにミーティングを作るよりも、普段の雑談が大切

お二人で一緒のプロジェクトや業務に関わる機会はあるんですか?

山口:プロジェクトの種類や時期にもよりますが、ちょうど最近、小嵜さんと同じプロジェクトに携わっています。

小嵜:そのプロジェクトに関しては、実務は山口さんが担当してくれています。なので、私は山口さんの後ろで腕を組み、必要に応じて技術的なコミュニケーションができる壁打ち相手役として構えています。(笑)

なるほど。相手と壁打ちする回数や質によって、生み出すものも大きくなりそうですね。

山口:「壁打ち相手役」=「コミュニケーションが気軽にできる相手」がいることは、ものすごく大事なことだと考えています。3人揃えば文殊の知恵、とも言いますが、やっぱり人間アンサンブルって強いですし、一人よりも誰かと協力し合えば、お客様へ還元できることも大きくなります。

各プロジェクトごとでエンジニアの工数は決められていますが、だからといって個人作業になりすぎず、些細なことでもプロジェクトの垣根を超えた意見交換・情報共有が必要だと思います。

小嵜:同じプロジェクトに関わっていなくても、こまめにコミュニケーションをとっておくことは重要ですよね。過去に別のプロジェクトで試したアイデアを他の人から事前に聞いておけば、回り道を防ぐことに繋がりますし、逆にそのアイデアを別のプロジェクトで試して活かされることもあります。

コミュニケーションをとりやすい環境にするためには、どんなことが必要だと思いますか?

小嵜:何かのルールを作るというよりは、やっぱり話すことがすべてじゃないでしょうか。

山口:私も雑談が大事だと思います。30秒でも1分でも、話すことでお互いの情報を得ることはできるし、「共有できていなかった」「教えてほしかった」なんてことも、日々の会話である程度解決できることは多いはずです。

Kaggleチームの活動でも、コミュニケーションの機会を増やす活動が最近多くなったように感じます。昨年7月に合宿、今年5月にキックオフミーティングの実施がありましたが、オフラインでチーム全員が集まることも徐々に増えていますよね。

小嵜:キックオフではグループディスカッションやLT大会を行いましたが、オフラインだからこそテンポよく活発な議論を交わすことができました。
普段のオンラインミーティングではコンペの解法共有がメインですが、キックオフの時は、一人一人が今どういった分野に興味があるのかなど、深い話を聞くことができて良い機会になりました。

山口:私は入社して1週間後くらいの時期に参加しましたが、早速メンバー全員とオフラインで話せて貴重な時間になりました。Kaggleチームの昨年度の活動を振り返る時間があり、そこで多くのメンバーが「小嵜さんの入社によってチームの一体感が増した」という点を挙げていたことも印象的でした。
チームの一体感やコミュニケーションは自分も大切に思っていることなので、チームのさらなる成熟に貢献していきたいと思いました。単純に「小嵜さんすご!」という気持ちも湧きました。(笑)

     

Kaggleチームの活動に関連する事後レポートは下記からご覧いただけます。
Rist Kaggle Team 合宿
Rist Kaggle Team キックオフ2024

今後のKaggleチームの活動にぜひ期待したいところですが、チームとして目指していることや目標はありますか?

小嵜: Kaggleチームについては、お互いにサポートや手助けができるようなチーム作りを目指したいです。そうすることで、一人では生み出せないクオリティの高いものや結果が出せると考えています。
一人一人が専門領域に強みを持つチームなので、個々の活動とチームの活動は、うまくバランスをとってやっていけると良いなと思います。
また、私はマネージャーという立場なので「自分が何か動かないと」と思ってしまうのですが、社内チャットでKaggleチームの誰かがKaggleでメダルを獲得すると、誰かがお祝いの投稿をしてくれて、そういったチームが盛り上がる環境づくりも継続していきたいですね。

山口:私も小嵜さんと同じく、Kaggleチームが1つのチームとして目的に向かっていけば、会社の成長にも貢献できると考えています。
KagglerがKaggleにかける熱量はものすごいですが、それを仕事でも同じように維持できたら、生み出せるものは大きいと思っています。そのためには、みんなが共通の想いで向かっていけるビジョンを持つことが大事だと考えています。

インタビュー前編では、お二人がRistに入社した経緯や仕事内容を中心にお聞きしました。
コミュニケーションの重要性と、その具体的なメリットや考え方についても知ることができました。
後編では、お二人が取り組むKaggleについても深堀していきます。お楽しみに!

後編はこちら