売買仲介の実務で利用可能な『マンション価格査定 AI』を開発
〜東急リバブルと Rist の知見をもとに、AI が MER 値 1.98%という高い精度を実現〜
東急リバブル株式会社(以下東急リバブル) と株式会社 Rist(以下 Rist)は、東急リバブルの 査定担当者と同等水準(MER 値(※)1.98 %)の査定価格を算出できる高精度の『マンション価格 査定 AI』を開発いたしました。 本システムにより、査定業務の高度な標準化、査定に係る業務時間の短縮(生産性の向上)を実 現し、不動産売却を検討されているお客様に対して、より質の高い売却サービスをスピーディに お届けすることが可能となります。
(※) MER 値(Median Error Rate:誤差率の中央値)MER 値が小さいほど推定精度が高いことを 意味します。
■開発の背景
マンションの価格査定とは、不動産売買に精通した査定担当者が自らの経験を活かし、市場動向なども考慮した上で、実際に売買された取引事例と比較しながら価格を算出するものです。その査定価格は、査定担当者の経験値や市場動向の捉え方、比較する取引事例の選び方の違いに よって差異も生じ得ますが、一般的な査定ルールや社内のチェック体制によってその品質が維持されています。
査定担当者は、対象マンションや周辺エリア、近隣の取引事例に関する情報を収集・分析し、その取引事例については類似性の評価を行います。そこから全体像を把握した上で、類似性の高い取引事例を選択、重み付けをして査定価格を算出しています。
東急リバブルでは年間3万件超のマンション査定を首都圏エリアで承っており、年間約15,000時間の削減効果を見込んでおります。これによって査定品質を維持しながら高度な自動化を図り、 質の高いサービスをお客様にスピーディーにお届けすることが可能となります。業務効率化による働き方改革の推進、コンサルティングサービスの充実など創出された時間を活用した顧客接点の深化、これを通じての顧客満足度の向上など、様々な効果が期待されています。
■AI 査定の実現
本システムは、東急リバブルにおける一般的な査定ルールの適用と、明確なルール化が難しい査定担当者の経験則(暗黙知)による判断、その両方を兼ね備えたAI 査定システムです。AIモデルの作製にあたっては、東急リバブル査定担当者3名による 1,000件を超える査定データ(学習用データ)を用意しました。
東急リバブルの査定担当者の知見とRistのデータサイエンティストの知見を活かすことで、業界内においてもトップレベルと考えられるMER値1.98%を実現することができました。(東急リバブル査定担当者が作製した検証用データ96件による検証結果)
【検証結果】 誤差率) 中央値(MER 値):1.98% 平均値:2.47% 最大値:7.96% 最小値:0.02%
検証例) 東京都目黒区 72.00 m² 3LDK 東急リバブル査定担当者:89,320,000 円 マンション価格査定 AI :87,594,372 円 誤差 1,725,628 円(1.97%)
■“人”と“AI”とのコラボレーション
マンション価格の査定については、前記のとおり近隣取引事例を比較検討していますが、中には比較事例が少ない、又は比較事例との類似性が低いケースもあります。この場合、査定担当者による査定価格の算出も難易度が高いものとなり、慎重な対応が求められます。 本システムでは、AIが近隣取引事例の中から類似性の高いものを選択し(事例選択AI)、重み付けを行って査定価格を算出(査定価格算出AI)しますが、その過程において、類似した取引事例が少ない、又はその類似性が低いことなど、AI が査定結果に注意すべきと判断した場合、その事実を査定担当者に伝える自己診断機能(自信度算出AI)も合わせて開発しました。
これによって通常の査定は AI が単独で行い、難易度の高い査定は担当者にその旨通知して、査定価格の妥当性について判断を求めることが可能となりました。誤差率が比較的高い査定結果に対しては査定担当者の検討・判断を入れることによって、査定品質が担保されます。 本システムは、単にAIで査定を行うことが目的ではなく、お客様に対して信頼性の高い査定結果をスピーディにお届けすることを目指しています。
■今後の展開
東急リバブルでは、本システムを現行査定システムに連携するための準備を進めており、2022年初頭には首都圏の売買仲介店舗の業務に組込まれる予定です。その後、順次全国の売買仲介店舗へ拡大する予定です。
また、東急リバブルとRist は、マンション価格査定AIの開発で培ったノウハウとパートナーシップ によって、マンションよりも難易度が高いと言われる土地・一戸建の価格査定 AI 開発にも、ともに挑戦して参ります。
昨今、不動産業界においても様々な業務に対するデジタル化のニーズが高まり、各種サービスが提供されております。将来的には本システムを外部公開(サービス提供)することも検討して参ります。